以前は一人でキッチンに立つのがあんなにさみしかったのに、
「今はキッチンに立つだけで元気が出る。
今日もがんばろうって思えるんです」
というYさん。
家族が応援してくれたこともあって、キッチンをリフォームすることが決まってからはまるで水を得た魚のように、自分にとって本当に居心地のいいキッチンって?と考え、こだわり続けました。
キッチンにいつも家族が集まるように、リビングに向いたアイランドの横にテーブルを置き、さらにお子さんたちのお勉強コーナーをキッチンの正面に据えたレイアウトについては前編をご覧いただくとして、こちらではYさんのこだわりのディテールの数々をご紹介していきたいと思います。
広々とした木のワークトップ。国産のヤマザクラです。キメが細かいので汚れにくく、キッチンのワークトップには最適な木のひとつです。
水回りに木なんて、と思われる方も多いかもしれませんが、エゴマ油とミツロウで仕上げた天板は水も玉のように弾きますし、油染みにもなりません。
一般的なキッチンの天板にはステンレスや人工大理石がよく使われますが、そもそもどんな素材も、日々使えばちょっとしたキズやあとはついていくもの。
木も同じようにキズやあとがつくことはあります。ただ、それによって見苦しくなることなく、むしろ経年でツヤや味わいが増していくのが木の天板のかわいがり甲斐のあるところ。使い込むほどに美しく、気楽に使えるようになっていく革の道具に似ているように思います。特にヤマザクラは色味の濃い木肌なので、そういったキズやあとが目立ちにくいのも安心です。
ニスやウレタンで仕上げた人工的なツヤとは違う、自然な光沢がとっても美しいんです。
そんな水にも強いヤマザクラの木ですが、それでもより安心して使っていただくための配慮も忘れていません。
シンクは木の天板に合わせて、水仕舞いよくデザインしたママルのオリジナルシンク。水切りかごはシンクの中、絶妙な高さに置けるようにしています。高すぎると積み重ねた食器が目立ち、低すぎると洗っている最中に水がかかってしまう… そんなこれまでのお客様からの声を反映させて作りました。
水栓は天板より一段低いスペースに取り付け。水栓の周りに水が広がらないようにしています。
優美なフォルムが印象的な水栓は米国デルタ社製のタッチ水栓。本体どこでも、軽くタッチするだけで水の出し止めができますので、本体のレバーを触れることが少なくなります。ここまで配慮すると、水栓の周りが水でビショビショになることもほとんどありません(*^^*)
とは言え、いそがしい毎日の中、食洗機のサポートを受けない手はありません。
画像ではちょっとわかりづらいですが、右手のキッチンの大きな扉の中にはアスコの食洗機(60センチ幅)がスタンバイ。オール扉タイプなので操作パネルが外から見えず、食洗機が入っているようには全く見えません。
続いてガスコンロ周りです。
クックトップはリンナイのドロップインコンロを横一列に3つ並べました。
オーブンはミーレの電気オーブン。
横並びだとお鍋同士が重なることもなく、ストレスを感じずにお料理できます。重厚かつモダンなフォルムの五徳も美しいですね。
コンロ脇の壁にアイアンバーを取り付けて調理器具を吊っていくのはYさんのアイディア(^^)
今回、壁側のキッチンの幅が非常に長かったので、水回り、コンロ、作業スペースはあえてコンパクトにまとめ、離れた端の部分は上のようなカフェ・お茶用品のスペースにしました。
吊り戸棚のすぐ下には、洋書で見た写真を参考に、プレートスタンドにもなる格子状の棚板を作ってみました。これ、すごく便利です♪
壁面はサブウェイタイルでお部屋全体を明るくてお洒落な雰囲気に。アメリカ製のコンセントプレートとマッチしています。
まだまだ工夫は続きます。
コンロと冷蔵庫の間にはタイルの壁を作ったんですが、なんと、その壁全体を調味料や乾物などを収める大容量のストッカーにしました。
見ていただきたいのは中段に置かれたブレンダー。実はストッカーの奥に設けたコンセントに常につないであるので、ストッカーを開けるだけですぐにブレンダーを使うことができるんです。
たまに使うけど、その都度出したりしまったりするのが厄介、といった家電類には良いアイディアですね。
引き出しのハンドルはオリジナルのアイアンバー。鉄の厚板から切り出して作り、薪ストーブと同じ塗装を施して仕上げています。なんとも落ち着いた良い風合いです!
他にも、Yさんが見つけたガラスのつまみや、
本体と同じヤマザクラで作った木のハンドルなども。Yさん、楽しんでます(*^^*)
引き出しのひとつには大きな米びつが。ご自身も農家であり、7人の大家族の元気を生み出すお米には、スペシャルな場所が与えられました!
キッチンが完成してしばらく経ったある日。Yさんから1枚のスナップが届きました。それがこちら。
調理器具や食器も並び、良い感じに生活感が出たキッチン。そこに佇むのは2人の娘さんたち。実はYさんは小淵沢のお気に入りのショップに頻繁に足を運ばれるほど、インテリア雑貨等が大好き。そんな中で磨かれたセンスがこの1枚の写真やキッチンの暮らし方の随所に光っています。
以前は一人でキッチンに立つのがあんなにさみしかったのに、
「今はキッチンに立つだけで元気が出る。
今日もがんばろうって思えるんです」
そんなYさんの言葉の奥から、あの時、家族に思い切って本当の気持ちを打ち明けたことが、活き活きと働き、暮らしを楽しむことができる今につながっていること、そしてそんな毎日を応援してくれている家族への感謝の気持ちが伝わってくるんです。
キッチンは家族を幸せにします。
To Create Loveful families !
施工地:長野県南牧村
デザイン:浦野伸也
製作チーム:片山浩二・川嶋弘嗣
材種:ヤマザクラ(キッチン)
ナラ(デスク、壁面本棚)
キャビネットサイズ:
W2200 x D1000 x H900(アイランド側)
W5115 x D650 x H850(壁面側)
W1760 x D500 x H720 (デスク)
W1760 x D250 x H1000(壁面本棚)